まず始めに、漫画ということで最初から敬遠する方もいると思うが、サスペンス好きであれば、一読の価値はおそらくあるだろう。

私は漫画に関して言えば、人並みに読むぐらいであるが、ここ数年、漫画の質が低下している気がしてならない。以前は週間少年ジャンプで育った私であるが、魅力的な漫画の減少で同誌を離れて、かなりの歳月が経った。自分の世代をただ肯定しているだけに思われるかもしれないが、最盛期のジャンプは現在に比べ華があった。『ドラゴンボール』『幽々白書』『スラムダンク』の3強を筆頭に、『ろくでなしブルース』など多くの名作を輩出した。ストーリーの質・キャラクターの華やかさ・笑い、そして画力。どれを採っても人気漫画に関してはそれを備えていた。数々の名作も時の経過と共に消えていき、それに変わり得るだけの漫画は現れない。故に、ジャンプから、いや、漫画から次第と遠ざかる。もちろん、少年期に比べれば漫画の比重が減ること自体当然ではあるのだが。

気分を害される方もいるとは思うが、今のジャンプには名作を予感させる漫画がない・・・ただ１つを除いて。『デスノート』、久々にストーリー・画力を共に備えた良作が現れた。1週間くらい前に興味を持ち始めて試しに読んでみたら、その独特のシナリオに惹きこまれた。ストーリーを軽く紹介しよう。

主人公『夜神月』は死神が落としたデスノートというノートを偶然拾う。デスノートに人間の名前を書けば、その人間は必ず死ぬ。夜神は犯罪者など社会的『悪』のない世の中を目指すべく大量殺人を始める。そして、夜神を捕まえるべく探偵も出現して、互いに命を懸けた真剣勝負となる。

設定こそ非現実的だが、夜神と探偵の緻密な洞察力を使った知恵比べ。本格的なサスペンスドラマが繰り広げられる。漫画が苦手だけど、でもミステリー好きという方に是非薦めたい一冊である。なんせ、漫画を一冊読むのに、1時間半以上かかるという非常に濃い（難しい）内容。知らないままでいるのは勿体無いぐらいだ。ただ、主人公が『犯罪者であれば殺しても構わない』そんな思考回路なだけに、内容的には少年誌で扱うには、少し危うい感もある。

文章だけで魅せるサスペンスもある。しかし、たまには文章と絵の両面から魅せてくれるサスペンスも如何であろうか？